今は売り時?消費増税から見るマンション売却のタイミング

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消費税が2019年10月に10%に引き上げられますね。

同じ品を買うにしても、消費税の負担が増えると当然家庭の出費は増えてしまいます。

そのため、「少しでも負担が少ないうちに、必要なものは買っておこう!」という消費者心理がはたらき、消費増税のタイミングでは各業界で駆け込み需要が起こります。

今回の消費増税のタイミングでは、飲食料品など一部の商品やサービスついては軽減税率制度も同時に導入されます。(飲食料品の消費税は8%のまま据え置きにされる制度のことです。)

したがって、日頃のスーパーでの食材購入には大きくは影響しませんが、それでも飲食料品以外の日用消費財をはじめとした、いろいろな商品・サービスに対して、少なからず駆け込み需要が起こることでしょう。

では、不動産業界ではどうなるのでしょうか?

今マンションを持っている場合、それは売った方が良いのでしょうか?
それとも、売らない方が良いのでしょうか?

今回は消費増税の観点から、マンション売却のタイミングについて検討していきます

結論

もし、手持ちの不動産の収支が赤字であと3年も継続して保有するのはキツい、または費用負担を最大限少なくしたいという金銭事情があるのであれば、「売り」。

そうではないのであれば、3年以上は保有し続ける前提で、「待ち(=売らない)」。

消費増税という観点から見た場合、これが筆者の意見です。

(※あくまで、筆者個人の意見です。)
(※不動産マーケットサイクルから見れば、今は売り時(むしろもはや売りづらいフェーズに入っている)と見られるため、もしあなたがキャピタルゲインを狙いながらすでに売却活動を開始していて、かつ良い買い手がつきそうな目処が立っているということであれば、その取引を前向きに検討するのが賢明に思います!^^)

なぜか?

消費増税は個人の不動産を売る側の立場からすればほとんど不利な影響を及ぼさないと思われるためです。
具体的には以下の3つがポイントです。(解説は後述します)

①売主側の消費増税後のマイナス影響→売主側の費用負担増は2〜6万円程度
②買主側の消費増税後のマイナス影響→買主側の費用負担増は3〜10万円程度
③売主側の消費増税後のプラス影響→課税事業者との価格差を出しやすくなる

懸念事項はないの?

もちろん、あります。

懸念として考えられることは以下の2点です。
(こちらも詳細は後述します)

①消費税増税による景気の落ち込み
②2020年の東京オリンピック後の経済動向
(後者は、消費税増税のタイミングとたまたま時期が近いため、挙げています)

そもそも不動産の売却に消費税はかかるの?

この答えは、「かかる場合もあるしかからない場合もあります」です。

不動産の売却に消費税がかかるか否かは、不動産を売却する人、すなわち売主が課税事業者か否かに寄ります。

課税事業者が不動産の売却をした場合は、その不動産の建物部分に対して消費税が課されます。(土地は非課税のため、不動産の土地部分に関しては消費税は課されません。)

一方、免税業者や事業ではない個人が不動産の売却をした場合には、消費税は課されません。
つまり、不動産を一般の個人が売りに出す場合には、消費税はかからないのです。

ちなみに、これについては、国税庁のタックスアンサー(よくある税の質問)にも具体的に書かれていますので、より詳しく確認されたいという方はこちらからどうぞ!

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国税庁・タックスアンサー「No. 6931 消費税等と譲渡所得」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6931.htm

ならば、消費増税は不動産売買には関係ない?!

いいえ、関係はあります。

なぜなら、仲介手数料などの売却にかかる費用に関しては消費税がかかるからです。
不動産の価格に比べれば仲介手数料は3〜4%程度ではありますが、関係がないわけではありません。

売主側は消費増税によりどの程度費用負担が上がるのか?

不動産価格の3〜4%程度といっても、なにせ不動産そのものの金額が大きいため、仲介手数料も100〜300万円程度かかることになります。除塵にとっては、大きなお金ですよね。

宅地建物取引業法により、不動産会社が受け取ることのできる仲介手数料には上限があり、400万円超の取引価格においては「3%+6万円」と定められています。

では、仮に3,000万円のマンションと1億円のマンションを売りに出した場合の仲介手数料はいくらになるでしょう?(以下は、仲介手数料の上限である「取引価格の3%+6万円」を請求されるものとして計算します。)

<3,000万円のマンションの場合> 3,000万円×3%+6万円=96万円(税抜)
<1億円のマンションの場合> 1億円×3%+6万円=306万円(税抜)

次に、仲介手数料が100万円の場合と300万円の場合とで、それぞれ消費増税の影響を確認してみましょう。(便宜的に、上記の数字をざっくり100万円単位にまとめています。)

【消費増税前:消費税8%】
<仲介手数料が100万円のとき> 100万円×8%=8万円
<仲介手数料が300万円のとき> 300万円×8%=24万円

【消費増税後:消費税10%】
<仲介手数料が100万円のとき> 100万円×10%=10万円
<仲介手数料が300万円のとき> 300万円×10%=30万円

【消費増税前後の差異】
<仲介手数料が100万円のとき> 10万円ー8万円=2万円
<仲介手数料が300万円のとき> 30万円ー24万円=6万円

ということは、3,000万円のマンションを売るのであれば、消費増税後は2万円程度が追加費用として、1億円のマンションを売るのであれば、消費増税後は6万円程度が追加費用として発生するということです。

なお、もし売却の際に、立退料や建物の修繕費などが発生する可能性がある場合には、それらの費用についても消費増税による影響金額を上記同様に概算しておけると良いですね。

ポイント①
消費増税による売主側の費用負担増は2〜6万円程度で、負担はそこまで大きくない。
(※3,000万円〜1億円程度の価格で売却する場合)
(※仲介手数料以外の特殊費用が発生しない場合)
→消費増税は、売主側の金銭負担の観点からは、売り急がなくてはいけない大きな理由にはならない。

買主側は消費増税によりどの程度費用負担が上がるのか?

ここまでは、売主側の負担について見てきましたが、不動産を売りに出すとなれば、買主側のお財布事情を把握しておくことも大切です。

消費増税は、買主側にはどのような影響を与えるのでしょうか?

不動産を購入した経験のある方はすでにご存知かと思いますが、不動産を購入するときには、仲介手数料の他に登記費用なども発生し、費用が嵩みます。

一般的には取引価格の5%程度の出費を見ておくのが妥当です。

では、先ほどと同じ条件で。3,000万円のマンションと1億円のマンションを購入した場合の取得費用を試算してみましょう!(以下は、一般水準である「取得価格の5%」かかるものとして計算しています。)

<3,000万円のマンションの場合> 3,000万円×5%=150万円(税抜)
<1億円のマンションの場合> 1億円×5%=500万円(税抜)

次に、取得費が150万円の場合と500万円の場合とで、それぞれ消費増税の影響を確認してみましょう。

【消費増税前:消費税8%】
<取得費が150万円のとき> 150万円×8%=12万円
<取得費が500万円のとき> 500万円×8%=40万円

【消費増税後:消費税10%】
<取得費が150万円のとき> 150万円×10%=15万円
<取得費が500万円のとき> 500万円×10%=50万円

【消費増税前後の差異】
<取得費が150万円のとき> 15万円ー12万円=3万円
<取得費が500万円のとき> 50万円ー40万円=10万円

売主側と比べてみると、増税による影響は多少大きいですね。
このため、多かれ少なかれ駆け込み需要自体はあるかと思います。
ですが、そこまで多くはないだろうというのが筆者の予想です。

というのも、2014年4月に消費税が5%から8%に変わり、各マーケットで駆け込み需要が見られましたが、不動産売買マーケットに関しては、あまり見られずに終わったというのが実態でした。

今回は上がり幅が前回よりも1%小さい、+2%の増税です。したがって、今回も前回の消費増税と同程度、あるいはほとんど駆け込み需要はないのではないか、と考えています。

ポイント②
消費増税による買主側の費用負担増は3〜10万円程度で、負担はそこまで大きくない。
(※3,000万円〜1億円程度の価格で購入する場合)
(※リフォームなどの特殊費用が発生しない場合)
→消費増税は、買主側の金銭負担の観点からは、買い急がなくてはいけない大きな理由にはならない。

消費税率が大きい程、売却時に不動産業者よりも有利になれる?!

ここまで、「売主が個人の場合」の取引には、売主側・買主側ともに消費増税の影響はさほど大きくは受けないということを書いてきました。

筆者が次の着眼ポイントとしたのは、個人と事業者との間で売却価格に違いが出てくる点についてです。

不動産を個人が売却する場合には消費税は課せられない、ということは先述したとおりです。そして、不動産を事業者(課税事業者)が売却する場合には、消費税が課せられます。

ここからは、少し複雑な話になってくるので、個人Aさんと課税事業者Bさんを例にして、お話していきます。

仮に、AさんBさんの両者が同じ分譲マンションの一室をそれぞれに売りに出そうとしているとしましょう。二人ともローンの残債が5,000万円あるため、二人とも5,000万円以上で売れなくてはローン返済ができなくなってしまいます。

もし、2019年10月1日に、二人とも5,250万円で売れたとしたらどうでしょう?
二人はそれぞれどの程度利益が出ていることになるでしょうか?

なお、取引価格の仲介手数料は3%+6万円かかり、消費税率は10%、土地:建物=3:7とします。(数学の問題集みたいになっていますが、ここで大切なのは結果のみです。計算自体は、税計算が大好きな方だけ見てください。)

【Aさんの場合】
譲渡価格:5,350万円
消費税:0円

仲介手数料:5,350万円×3%+6万円=166.5万円
消費税:16.65万円
ローン返済:5,000万円(完済)

利益:5,350万円ー(166.5万円+16.65万円)ー5,000万円=166.85万円

【Bさんの場合】
譲渡価格:5,000万円
消費税:350万円(※建物分に対する消費税)

仲介手数料:5,000万円×3%+6万円=156万円
消費税:15.6万円
ローン返済:5,000万円(完済)

利益:5,000万円ー156万円ー5,000万円=▲156万円

ここで注目していただきたいのは、個人Aさんは166.85万円の利益が出ているのに対して、Bさんは156万円の損失が出ているというところです。

課税事業者Bさんの場合、5,350万円(税込)で売れたとしても、消費税分を除くと5,000万円で売却したことになります。

消費税はキャッシュとしては一旦受け取りますが、後々納税しなくてはいけないので手元には残りません。

ということは、5,000万円は全額ローンの返済に充てるとしたら、仲介手数料分は自分のお財布から別途なんとかしなくてはいけなくなります。

実際にその余裕があるようであればそれでも良いかも知れませんが、そうでなければ、取引価格はもっと釣り上げなくてはいけません。

つまり、AさんとBさんのマンションが全く同じマンション(同じフロアで間取りも日当たりも一緒)だったとしても、売却時の値段に差が出たり、同じ価格で売れてもキャッシュフローの余裕に差が出てきたりするのです。

ということは、Aさんの立場からすれば、より競合優位な条件での売却活動ができるということです。課税事業者の競合価格よりも少しだけ下げて、価格優位に早く売り抜くことができます。

もしくは、できるだけ高値で売りたい場合には、キャッシュフローに余裕がある分、居室内を少しだけ修繕して綺麗に整え、高く売る戦略を取ることもできます。要は、売却時、自分の売りたい戦略に合わせてより多くの選択肢を持ち得るということなのです。

消費税率が上がれば上がる程、課税事業者Bさんの負担は大きくなっていくので、その分個人Aさんの競合優位性は相対的に上がって行きます。

そのため、消費増税は、個人Aさんの立場からすると、競合優位に売却活動ができるチャンスが増えるという風に捉えることもできるのです。

・・・ちょっと難しいお話になりましたね^^;

個人の人が課税事業者と比べて競合優位になって行くんだな、ということがなんとなく分かっていれば詳細は全く重要ではありませんので、ご安心ください

ポイント③
消費税率が上がれば上がる程、課税事業者の負担は大きくなっていくので、その分相対的に個人や免税事業者の競合優位性が上がり、有利な条件で売却活動を行いやすくなる。
→消費増税は、個人の立場からすれば、売り急がなくてはいけない大きな理由にはならない。

まとめ

• 結論:もし、すぐに手元にまとまったお金が欲しい・2〜10万円程度でも払い出しを少なくして売りたいという金銭的な事情があるのであれば、「売り」。そうでなく消費増税が心配だからという程度の理由しか売却する決め手がないのであれば、「待ち(=売らない)」。
• 理由①:消費増税後の売主側の追加費用負担増は2〜6万円程度と、売り急ぐ程の影響ではないため
• 理由②:消費増税後の買主側の追加費用負担増は3〜10万円程度と、買い急ぐ程の影響ではないため
• 理由③:個人または免税事業者が売主になる場合の消費増税後のプラスの影響として、課税事業者との競合優位性を出しやすくなるということが挙げられ、じっくり売却戦略を練る余裕が生まれることが予想できるため

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